大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(う)565号 判決

職権で調査すると、原審第一回公判調書中に弁護人の被告事件に対する陳述に関する記載が全くないことが明らかである。しかし、刑事訴訟規則四四条一項によると、被告事件に対する陳述の機会を与えたかどうかの点は公判調書の必要的記載事項ではないうえ、弁護人に対し被告事件についての陳述の機会を与えることは通常行われる訴訟手続であるし、右公判期日では被告事件に対する被告人の陳述が行われ(信号違反の点を否認している)、証拠調べまで手続が進んでいることにも徴すると、弁護人に対しても被告事件についての陳述の機会が与えられていたとみられるところ、公判調書上に弁護人の被告事件についての陳述が記載されなかつた事情については、弁護人が何らの陳述もしなかつたので書記官が記載しなかつたか、もしくは、弁護人の陳述はなされたけれども公判調書への記載が書記官により遺脱された可能性が考えられる。前者の場合は(冒頭手続の機会になされた被告事件についての陳述は、公判調書の必要的記載事項であり、この陳述の記載がないのは、この陳述がなされなかつたと考えられなくもない)、訴訟手続上何らの問題も生じないこというまでもない。後者の場合は、訴訟手続的には陳述内容が公判調書に記載されていない瑕疵があるといわざるをえないけれども、本件においては、その直前において被告人の陳述がなされているうえ、公判の最終段階において弁護人の弁論要旨に基づく最終陳述もなされており、本件訴訟手続の経過等に徴すれば、右の訴訟手続の違反の点が判決に影響を及ぼすこと明らかであるとはいえない。

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